VS~Honey~


先生が私を見つめ、ギュッともう一度私を強く抱きしめた。男の態度で。


「止めてください……」


どうしていいかわからず、声が悲しくて震える。
先生の気持ちには答えられない。
先生の好意は嬉しいが、気持ちには答えられなかった。


“佐々木くんも貴女を探していた”


先生の声が蘇り、晴紀の姿が頭に浮かぶ。


晴紀っ! 晴紀っ!


心の中で叫ぶ。
しかし、この前のように
晴紀が現れることはなかった。


「やめてっ。先生、こんなの違うよ。こんなことする先生は嫌い」


声が震え、先生には申し訳ないが拒否の言葉が出る。
一瞬、先生の腕がゆるみ、その隙に先生を突き飛ばす。

走り去る瞬間、先生の悲しそうな顔が目に入った 。

悲しむならこんなことしなければいいのに!

でも、先生の気持ちも理解はできる。

どうしたら良かったの。

走りながら自然と涙が溢れてきた。


無性に晴紀にあいたかった。




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