VS~Honey~
翌日。
俺は資料室に先生を呼び出した。
ここならめったに誰もこないからどんな話をしても問題はない。
そして目の前の先生は白衣のポケットに手を入れ、薄く微笑んでいる。
いつもと変わらない先生の顔だ。
「話って何ですか? 佐々木くん」
「わかっているでしょう、斎藤先生」
今更何をとぼけようとしているのか、本題にさっさと入りたい、という俺の気持ちに気がついたのか先生は小さく苦笑した。
「相川さんのことですか」
「そうです。もう美紗にこれ以上、近寄らないで下さい」
「なぜ?」
「俺のだからです」
そう告げると先生から笑みが消え、無表情になった。
「そういうことですか」
低くつぶやく。
その顔は諦めと落胆が混じっているようだ。
「“もう”貴方のものなんですね」
「あいつに触っていいのは俺だけなんですよ」
一瞬、先生と睨み合う。
「アイドルの貴方と一般人の彼女は釣り合いますかね?」
「そんなの関係ない。俺はあいつだから好きなんだよ。別にアイドルとして付き合うわけじゃない」