VS~Honey~
そしてフッと気付くと晴紀が席にいなかった。
どうしよう、結衣にちょっと聞いてみようかな。
迷いながらもチャンスだと口を開く。
「ねぇ、隣の佐々木くんって……」
「あ、鞄ないね。帰ったんじゃないかな」
「帰った?」
どういう人か聞こうとしたが、思ったのとは別の返答だった。
帰ったなんてサボりか!?
ヤンキー? サボり魔? 悪いやつとつるんでるとか?
色々なことを考えていると、結衣が当然のように言った。
「仕事だと思うよ」
「仕事? バイトとかしてるの?」
そんなに生活が苦しいのだろうか?
そんな風には見えなかったが。
「バイトっていうか、彼、売れっ子芸能人だから」
あ、なんだ。芸能人か。
売れっ子芸能人……?
芸能…………………?
「って、うっそ!! 芸能人なの!?」
「うん。超人気アイドル なんだよ」
マジですか。あいつってアイドルだったんだ。
アイドルがこんな身近にいたなんて思いもしなかった。
あぁ、でもあの顔立ち。ちょっと納得出来る。
確かに芸能人にいそうなほど整っている。
「Mars〈マーズ〉っていう5人組のアイドルグループ。知らない?」
私は首を横にふる。知るわけない。日本にはいなかったんだから。