VS~Honey~



そしてフッと気付くと晴紀が席にいなかった。
どうしよう、結衣にちょっと聞いてみようかな。
迷いながらもチャンスだと口を開く。


「ねぇ、隣の佐々木くんって……」

「あ、鞄ないね。帰ったんじゃないかな」

「帰った?」


どういう人か聞こうとしたが、思ったのとは別の返答だった。

帰ったなんてサボりか!?

ヤンキー? サボり魔? 悪いやつとつるんでるとか?

色々なことを考えていると、結衣が当然のように言った。


「仕事だと思うよ」

「仕事? バイトとかしてるの?」


そんなに生活が苦しいのだろうか?
そんな風には見えなかったが。


「バイトっていうか、彼、売れっ子芸能人だから」


あ、なんだ。芸能人か。



売れっ子芸能人……?





芸能…………………?






「って、うっそ!! 芸能人なの!?」

「うん。超人気アイドル なんだよ」



マジですか。あいつってアイドルだったんだ。 
アイドルがこんな身近にいたなんて思いもしなかった。
あぁ、でもあの顔立ち。ちょっと納得出来る。
確かに芸能人にいそうなほど整っている。


「Mars〈マーズ〉っていう5人組のアイドルグループ。知らない?」



私は首を横にふる。知るわけない。日本にはいなかったんだから。




< 16 / 211 >

この作品をシェア

pagetop