VS~Honey~
「フッ。口調が変わってますよ、佐々木くん」
「だから? あんただって俺と同類のくせに」
素だろうが関係ない。
俺は美紗にちょっかいだす先生に苛立っているのだから作った顔、口調で話すつもりはなかった。
「まぁ、貴方の本性なんて僕はどうでもいいですがね。しかし、相川さんが貴方を選んだってことは、僕は振られてしまいましたね」
先生は悲しそうな顔をする。そんな顔をされても、立場を忘れて暴走した先生を俺は許したくなかった。
それに、俺自身この先生を気に入っていたから落胆は大きい。
「もう彼女にちょっかいはかけませんよ。どうせ僕は秋にはこの高校を去るし、穏便に去ります。彼女には貴方から謝っておいてください。悪かったと」
「え、先生辞めるんですか」
「聞いてませんか? カナダの大学に数学の研究者として呼ばれているんですよ」
口ぶりから美紗には話したのだろう。
それであの時の美紗が泣きながら言っていたことがわかった。
先生にされたことは嫌だったけど、そこに
学校を去るという焦りを知り、先生の気持ちもわからなくはないから尚更苦しくなって泣いたのだ。
「焦りすぎました。大人気なかったですよね。一応反省してますから」
飄々とした口調に本当にそう思っているのかは怪しいが、一応頷く。