VS~Honey~
すぐには見つからず、しばらくしてから降りていくと既に龍太郎はいなかった。
「あれ? 龍太郎くんは?」
「あ、なんか、時間がないって言って帰っていったよ」
帰った? なんなんだあの人は。
わけがわからないまま、まぁいいかと戻ろうとして異変に気が付く。
「美紗?」
振り向いて目を合わそうとするとサッとそらされた。
ん? なぜ逸らした?
「美紗?」
「な、何?」
名前を呼んで少し屈み、目を会わせようとするが明らかに美紗の目が泳いでるし、挙動不審だった。
俺はにっこり微笑む。
「龍太郎くんに何か言われたろ?」
「何も?」
言われたな、これは。
俺の問いかけに即答するし、挙動が怪しい。
俺は小さくため息をついた。