VS~Honey~
家でのような表情や喋り方はしない。
誰に対しても同じ爽やかな表情をしている。
つまりは家のほうが素だということだろうけど、こんなにもギャップがあるなんて驚きだ。
だいぶそのギャップにも慣れてきた。
「あの~、ここって佐々木晴紀君のクラスですよね?」
二人組の女の子が教室の入り口から中を覗いていた。
リボンの色から一年生とわかる。
「呼ぶ?」
「あ、いいです。確認したかっただけなんで」
そう言って走り去ってしまった。
たまにある。晴紀の姿を探す女の子達。
きっとマーズ目当てに入学したのだろう。
気の毒に。あの爽やかな姿に騙されてる。
あんな爽やかな人間がリアルにいるわけないじゃないか。
ああ、大きな声で言いたい。
あいつの本性を!
「言っとくけど、これが本来の俺なんだよ?」
穏やかな声に振り向けばそこには晴紀の姿が。
爽やかな笑顔で微笑んでいる。
どうしてこの人は人の考えを読むのかなぁ。
私はプイッと顔を背けた。
「何も言ってないでしょう」
「相川さんは顔に出やすいからわかるんだよ」
と、ニッコリ。
なにさ、ふ~んだ。
そこは否定できないから言い返せない。
すると廊下の奥から声をかけられた。
「あ、良いところに。佐々木くん。相川さん」