VS~Honey~


斎藤先生が両手に荷物を持ちながら困った表情で歩いてきた。


「なんですか? 斎藤先生」

「申し訳ありませんが、この荷物を数学準備室に戻しておいてくれませんか? 私はこの後会議があってもう行かなければならないんですよ」

「会議ですか。大変ですねぇ」


珍しく先生が急いでいると思ったらそういうことか。


「実は会議があること忘れてまして」

「あはは。珍しいですね」

「うっかりでした」


斎藤先生が気恥ずかしそうに笑う。
すると晴紀が先生の手の荷物をおもむろに受け取った。


「俺達がやりますから、先生は早く行ってください」



晴紀はニッコリ微笑む。
そしていくつか荷物を私に渡した。
だよね。私もいくんだよね。
はぁ、数学準備室って実験棟にあって遠いんだよなぁ。

「助かります。相川さん、重くないですか」

「これくらい大丈夫です」


そう言うと先生は嬉しそうに笑った。
その笑顔がなんとも可愛らしく、つられて笑う。


「佐々木くんもありがとう。今日は仕事は休みですか? 朝からいますが」

「夜にラジオの収録があるくらいなんですよ」

「そう。佐々木くんや青木くんは忙しいのに勉強も頑張っているから先生達は鼻が高いですよ」

「ありがとうございます。それより先生、急がないと」

「ああ、そうですね。では頼みます」


そう言って先生は私に視線を送る。笑って頷くと微笑んできびすを返して行った。

チラッと隣を見ると面倒くさそうに手の荷物を見つめている。

先生前だといい顔しちゃって。







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