VS~Honey~
晴紀は目を細めて低い声囁くように問いかける。
「どうせわかってたんだろ? これが本当の俺だって」
彼のつぶやきは柔らかく私の手にかかる。
ますます顔が赤くなった。
手を引こうにも晴紀がしっかり掴んでて離れない。
「意地悪なこと、いうなよな」
意地悪なのはあなたでしょーーー!!
なに切なげな顔してんのよっ!
騙されるな私!
ドキドキするな私!
なのに、言い返したいのに口をパクパクさせるだけで言葉にならない。
絶対顔は真っ赤だ。
すると追い討ちをかけるように晴紀は体を起こして一歩前に出た。
「美紗……」
「っ!」
肩に晴紀のおでこがのる。
肩から晴紀の体の熱が伝わり、さらさらの髪が首筋を撫でた。
そして、いつかのあの甘い香りがした。
どうしよう。どうしたらいいの!
なんで晴紀はこんなことをしているのか。
わけがわからずアワアワして完全にパニックになっていた。
「あ、あのっ!」
「くっ」
く?
ハッとして動きを止める。
「え……?」
「く……くっくっ……くっ。くっくっくっ。アハハっ!」
肩から重みが消えたと同時に、晴紀は私から離れ、堪えきれないというように腹を抱えて笑いだした。
「なっ!?」
「お前、本当面白いな。 免疫なさすぎ」
目に涙を浮かべて晴紀は笑いながら言う。
やられた!!
ってか、そもそも免疫ないとか、そんな問題なのあれは!?
言葉も出ない私に晴紀は囁いた。
「いじめたくなるよ」
そうニヤリと笑い、じゃぁなと晴紀は準備室を出ていった。