VS~Honey~
美紗はこれ幸いにときびすを返す。
そして思い出したように振り返った。
「あ! そっちこそ、ちゃんと自分の部屋で寝てよね!」
美紗がちょっと怒った表情をする。
それについては反論があった。
「言っとくけどなぁ、お前のあの部屋。お前が帰るまでは俺が使ってたんだかんな。それを忙しい合間に急遽変えたんだぞ」
「もとは私の部屋です」
「うっせーな。間違えちまうもんはしかたねぇだろ」
美紗の部屋は日当たりがよく、広さもあって使っていたが、帰国すると聞いて仕事の合間に別の部屋に移動した。
でも遅く帰ってくると疲れでフラフラし、無意識に前の部屋(今は美紗の部屋)で寝てしまう。
そう。つまりは美紗の隣で寝てしまうのだ。
一緒に住むようになってからまだ数日だが、この前のノートの書き写し以降、もう一度やってしまっていた。
それを言っているのだ。
「いい迷惑だよ。眠れないじゃない」
「じゃぁ寝るな。俺は寝る。オヤスミ」
「じ、自分の部屋行ってよね」
「当たりめーだ。バーカ」
そうして俺は美紗の隣を通りすぎ、自分の部屋へ戻った。
ったく。手ぇ出してないんだし、いいじゃねーか。
減るもんじゃねぇし?