VS~Honey~
どういう訳だよ! 説明してくれ!
混乱する頭を抱えて、蹲りそうになるのをなんとか留める。
「あ、お父さんに電話!」
アメリカ時間なんて気にしてらんない。
これは緊急事態だ。
お父さんにどういうことか説明してもらわなければならない。
もし男が勝手に空き家だったこの家に住み着いている可能性だって考えられるのだから。
プルル…プルル…
数回のコールがなったあと、受話器を取る音がした。
『はぁい』
この明るい声はお母さんである。
「お母さん!私。美紗だけど!」
挨拶もそこそこに話しかけるとお母さんは驚いたように『美紗?』と聞いた。
『あら、無事に着いたの? どうそっちは』
「うん。それよりお母さん、私以外に人、住んでる!」
『あぁ、うん』
…え?
私がくいぎみに要点を簡潔に伝えるとなんとも拍子抜けしそうな返事が帰ってきた。
「うんって……。驚かないの?」
『あら、だって……』
母の声が途中で遠ざかる。顔を上げると真後ろにはさっきの男が私の携帯を取り上げていた。
「ちょっと!」
慌てて手を伸ばすが男は背が高く、届かない。
それどころか、携帯を耳に当てて話し出したのだ。
「もしもし。おばさん? お久しぶりです。佐々木晴紀です」
『あ! 晴紀く~ん? 久しぶり。元気してた!?』
電話からテンションの上がった母の声がもれる。
え、なにこれ。どういうことなの?
「元気ですよ。先日、相川のおじさんから電話で……えぇ、美紗さんが来ると……えぇ、えぇ、」
佐々木晴紀は笑顔で母と会話をしている。
何? 知り合いだったの? もしかして元から話が通ってたとか?
ついじっと顔を見つめる。
しかし、談笑する笑顔もカッコイイときたか。