VS~Honey~
教室に戻るとすでに晴紀の鞄はなく、帰ったようだった。
結衣の姿もない。生徒会だと話していたからもう会議室へ行ってしまったのだろう。
暇なら今日こそ手伝ってもらおうと思ったのに当てが外れた。
正直、資料室へいくのが少し躊躇われる。
昨日のことを意識してしまったためか、妙に緊張するのだ。
気にしすぎだとわかってはいるのにソワソワしてしまう。
資料室に着くと一瞬、開けるのを躊躇するが、ひとりて自意識過剰になつているのも馬鹿馬鹿しく感じ、頭を軽く振り、ドアをノックして開けた。
相手は先生だ。昨日のも大した意味はない。
中に入ると、先生は棚の間から顔を見せる。
「失礼します」
「相川さん。すみません、今日も手伝ってもらって。助かります」
「いいえ、さぁ。さっさと片付けましょう!」
そう張り切った風を見せると、先生は笑った。
なんだ、いつもと変わらない。
やはり意識しすぎたのだ。
相手は先生なのだから、意識するようなことはあるはずがないのだから。
先生の態度にホッとして、今度こそ片付けに集中する。
残りは量的には後半分もない。
すぐに終わりそうだった。
「あ、それはこちらにお願いします」
「はい」
先生に言われて、資料を背伸びして棚に入れようとする。
しかし、あと少しなのに資料を乗せようとした手が届かない。
悪戦苦闘していると、スッと後ろから先生の手が伸びた。