VS~Honey~

先生が出ていき、ホッとする。


「大丈夫か?」


背中を向けていた晴紀がゆっくり振り返り、遣うような目線を寄越した。
安堵のためか、力が抜けそうになる。


「あ、ありがとう」

「ん」

「でもなんで、ここに?」

「たまたま通りかかったら声が聞こえたんだ」

「そうなんだ」


通りかかってくれて良かった。
晴紀が来なければどうなっていたんだろう。


「……手」

「え?」


晴紀の視線の先を見ると、私の手が晴紀の制服をしっかりと掴んでいた。

あれ、私いつの間に!


「ご、ごめんっ!」


慌てて手を離そうとしたら、晴紀がその手を掴んだ。


「いいって。どうせ怖かったんだろ?」

「どうせって!」

「震えてるぜ?美紗チャン」

「っ!」

「ハハ、だっせぇ」


晴紀は意地悪に笑う。

ちょっと悔しかったけど、その手は温かくて大きくて、私の手をすっぽりと包み込む。
その手が凄く安心する。

涙が滲みそうなくらい、安心したんだ。




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