VS~Honey~
嫉妬は…
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昨日、家に帰ってから美紗のおかしかった。どうやら資料室で斎藤先生と何かあったらしい。
と気が付いてから、俺はなぜかイライラしてる。
なんだかモヤモヤしてスッキリしない。
今だって、なぜ俺はここにいるんだろう。
人気のない実験棟の階段を上りながら頭を傾げる。
今日は仕事はもうないから帰ってゆっくりするつもりだった。
それなのに、いつの間にか資料室の前に立っていたのだ。
しかし俺の服を不安げに掴む美紗を見て、来て良かったと安堵の溜め息が出る。
震える手に、一瞬だけ肩を抱き寄せたくなった。
そんなことしたら、あの変態教師と同じになってしまう。
「さ、帰るか」
「うん」
震えがおさまって、表情の固さがとれた頃、握っていた手を離し、資料室を出る。
するとき、そこに能天気な声が聞こえた。
「あっれ~、晴紀と美紗ちゃんだ」
陸と田中結衣が歩いて来る。
なんでこんなところに二人でいるんだ。しかし、歩いてきた方角には図書室がある。
課題でもやってたのだろう。
「よう。まだいたのか」
「晴紀こそ。あれ? 美紗ちゃん、なんか暗いよ」
「美紗? どうかした?」
二人は様子がおかしかった美紗に気が付き、心配そうに覗き込む。
しかし、美紗はパッと笑顔を作り、首を振った。
「大丈夫だよ。片付けでちょっと疲れただけ」
「そう? お疲れさま。佐々木君も手伝ったの?」
「俺は通りかかっただけ」
「そーそー、手伝うわけないじゃんね」
結衣の問いかけに、俺はある意味事実を伝えたが、美紗は笑顔でそんな軽口を言う。
強がっちゃって。さっきまで震えてたくせに。
本当、気だけは強いんだ。
二人とは別れて美紗と校舎を連れだって出た。