VS~Honey~
少し歩いたところでふっと気が付いた。
美紗の歩きが遅い。
美紗は俺の隣を歩かず、数歩後ろから着いてきている。
明らかにゆっくり歩いていた。
なんだよ。
俺は振り返り、美紗を覗き込む。
「わざと? そんなに俺と歩くのいやなわけ?」
美紗は戸惑ったような表情を見せ、それにちょっとイラッとする。
「違くて」
美紗は弁解するように視線を漂わせる。
違うなら、まぁ、いい。
ならなんでだろうか。
黙っていると、何か言いたげに口を開いた。
「なに?」
「あのさ、一緒に帰るのはもちろんだけど、さらにアイドルが女の子と同じ家に入っていったらマズイでしょう?」
その言葉にはたっと気がつく。
確かに、そりゃそうだ。
週刊誌に写真でも撮られたらマズイ。
別々に家に入らないといけないと今更ながらに気がついた。
「お前先帰れ。俺、メンバーの家に用あるから」
「えっ?」
「あ、飯。暇なら俺のも作っといて~」
俺はひらひらと手を振り、時間稼ぎのため近くに住むメンバーの氷山レオの家にむかうことにした。