VS~Honey~
「言って。俺が来てどれだけ……なに?」
「っ……!」
美紗の前髪をいじり、目をしっかりと見つめる。
赤い顔しながらも悔しそうに俺を睨む。
負けず嫌いで気が強い。
でもそういうことすると、俺はますます意地悪したくなる。
でも、とふと気がついた。
先生が迫ったときはあんなに顔をひきつらせて嫌がっていたのに、どうして今は激しく抵抗しないのだろう。
今までだって俺が迫っても怖がることはなかった。
からかっているって目に見えてわかっているからか?
「……美紗」
「わかった! わかったから、囁かないで!」
わざと低い声で囁くと観念したのか、美紗が真っ赤になって叫ぶ。
「だから、あの時」
「あの時?」
「あんたがきてくれたとき! ……安心したの」
「は?」
「だから! あの時あんたが来てくれて、すごく安心したのっ!」
「安心?」
「そうよ! なんでそれがあんたなのかわからないけどね!」
もう寝る! と美紗は2階へ上がっていく。
その姿を見送りながら俺はそうか、と思った。