超短編 『当選』
サプライズ
おめでとう。あなたに決まりました。

そう言われたとき、正直驚いた。

まさか自分が選ばれるとは思ってもいなかった。
選ばれたいと思ってはいたが、仕事が忙しくてその募集には応募し損ねていたから、選ばれる可能性は無かったのだ

が、当選した。間違いではないらしい。

確かに私の名前での応募があり、推薦者の名前に妻の名前があったことが、後でわかった。

応募したのは私ではなく、私に内緒で応募した妻だったというのが事実だが、正直意外な気持ちを持った。

何故なら、妻とは別居をして半年にもなる。そんな妻がなぜ私の名前で応募していたのか。

選ばれた今となっては、そんなことは些細なことだ。

選ばれたという事実が何物にも優先する。

また、仕事に追われていたのが、当選したことで楽になった。

当選者であることが勤め先に伝わると、係長だったのが部長に昇進し、さらに出勤もしないで済むようになったからだ。

当選者なら当たり前といえばそうなのだが、自分がそのように待遇されると、なんだか妙にうれしかった。

当選者となると、世間からの扱いがガラリと変わるのだ。

この点は毎年の当選者に共通する事なので驚くべきことではない。
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