幻想
出会い
まもなく歩道に差し掛かろうという時に、信号が点滅し始めた。

真也は足取りをゆるめ、軽く息をついた。

いつからだろう?

点滅信号を見て、走るのではなく立ち止まるようになったのは。

いつからだろう?

朝起きた時に爽快感を感じられなくなったのは。

いつからだろう?

世の中すべてがばら色でなく灰色に見えるようになったのは。

いつからだろう?

自分は何のために生きているんだろうと頻繁に考えるようになったのは。

真也は深いため息をついた。

いつのまにか信号が青になっていた。

真也はまたのろのろと足を踏み出した。
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