幻想

陶酔

真也はゆっくりと瞼を開いた。

薄くなった頭を寒そうにさする。

あんなに愛し合っていたのに、なぜ別れることになったのだろう。

どうしても思い出せない。

そのことを考えようとすると、頭のしんが痺れるように痛んだ。

「一体どうしたって言うんだ」

分からない。

分からない。

暗雲のような不安が、胸いっぱいに広がった。

ただ。

一つだけ分かったことがある。

あの不思議な少女レイにもらったドロップを舐めると、断片的にではあるが過去を思い出すことが出来る。

何故かは分からない。

でも今は理由なんかどうでもいいと思った。

少しでも過去を知る手がかりになるなら、それにすがらずにはいられない。

そんな心境だったのだ。

真也は缶を振った。

また一粒ドロップを取り出すと、16歳の頃に戻って行った。
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