幻想
それからも真也は、何度も缶を振った。
ガラゴロ重い音をたてていた缶は、今ではカランと軽い音をたてるばかり。
大分中身が乏しくなってきた。
緑のドロップでは動物園へ行った。
白いドロップの時には、図書館で勉強した。
他にも数え切れないくらい真也は、16歳を堪能した。
そのすべての場面で、すぐ横にゆりがいた。
もはやゆりのいない現実には、何の未練もなくなっていた。
ドロップの舐めすぎで、上あごがヒリヒリと痛む。
それでも真也は、まだ舐め足りないと思った。
まだだ。
まだ分からない。
肝心なことが思い出せていない。
「レイに会ったらまたドロップを貰えるだろうか」
その時ふっと思い付いた。
もしかしたら、レイはゆりなのかも知れない。
しかしすぐに否定した。
そんなはずはない。
もしそうなら俺と同じ年齢のはずだ。
夢の中のゆりと同じ高校生である訳ないじゃないか。
真也は缶を振った。
カラン。
軽い音がして、ついに最後の一粒が転がり出た。
空になった缶は、手の中で消えてしまいそうなほどに存在感がなかった。
真也はためらった。
これで最後。
赤いドロップをじっと見つめる。
真也はぎゅっときつく目を閉じると、ドロップを口に含んだ。
ガラゴロ重い音をたてていた缶は、今ではカランと軽い音をたてるばかり。
大分中身が乏しくなってきた。
緑のドロップでは動物園へ行った。
白いドロップの時には、図書館で勉強した。
他にも数え切れないくらい真也は、16歳を堪能した。
そのすべての場面で、すぐ横にゆりがいた。
もはやゆりのいない現実には、何の未練もなくなっていた。
ドロップの舐めすぎで、上あごがヒリヒリと痛む。
それでも真也は、まだ舐め足りないと思った。
まだだ。
まだ分からない。
肝心なことが思い出せていない。
「レイに会ったらまたドロップを貰えるだろうか」
その時ふっと思い付いた。
もしかしたら、レイはゆりなのかも知れない。
しかしすぐに否定した。
そんなはずはない。
もしそうなら俺と同じ年齢のはずだ。
夢の中のゆりと同じ高校生である訳ないじゃないか。
真也は缶を振った。
カラン。
軽い音がして、ついに最後の一粒が転がり出た。
空になった缶は、手の中で消えてしまいそうなほどに存在感がなかった。
真也はためらった。
これで最後。
赤いドロップをじっと見つめる。
真也はぎゅっときつく目を閉じると、ドロップを口に含んだ。