幻想

少女の名はレイ

真也は家路についた。

今朝のレイとの出会いのおかげか、今日は一日気分が良かった。

仕事もバリバリこなして、同僚に不思議がられたほどだ。

「レイ…」

また会えるだろうか。

真也は缶を揺すった。

ガラゴロガラゴロ。

缶の中で色とりどりのドロップが踊った。

「舐めてみるか」

何だか勿体ないような気がして、今まで一粒も舐めていなかったのだ。

真也はフタを開けると、手の平に一粒コロンと転がした。

黄色いドロップ。

口にほうり込むとレモンの味が広がった。

「レイ…」

舐めながら私のことを思い出してね、と言っていたっけ。

その時。

視界がぐらりと傾いた。

具合が悪くなった訳ではない。

むしろまどろみの中にいるような心地好い気分。

「レイ…」

真也はもう一度そうつぶやくと、満足げな表情のまま静かに目を閉じた。
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