幻想
ふたを開けると、かび臭いにおいが鼻についた。

真也は少し顔をしかめてから、まず一番上のアルバムを取り出した。

高校の卒業アルバムだった。

「確か同じクラスだったから…2組だな」

ゆりはすぐに見つかった。

夢で見た通りに、髪をおさげにしている。

はにかんだような笑顔。

部活が何だったかは思い出せなかった。

端から順番に見ていき、テニス部の集合写真で、まぶしそうに顔をしかめているゆりを見つけた。

「連絡先は分かるかな?」

もう変わっているかもしれないが、せめて当時のものが分かれば、そこからたどれるかも知れない。

そう思って真也は、住所録を調べはじめた。

しかし。

結局見つける事は出来なかった。

「おかしいな」

彼女の連絡先を控えていないなんてことがあるだろうか?

それとも暗記していたので書き留める必要がなかったのか。

「仕方ない」

真也は諦めて、もう一度アルバムに見入った。
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