幻想
「あれ?」

真也はあることに気付いてドキリとした。

ガラゴロ。

かばんに閉まっておいたドロップの缶を取り出した。

「似てる」

改めて見ると、昼間会ったドロップ少女レイとゆりはそっくりだった。

レイは髪をおろしていたので印象が違ったため、今まで気づかなかったのだ。

「レイ」

変わった少女だった。

真也は缶のフタを開けると、また一粒取り出した。

茶色のドロップだった。

チョコレートの甘い香りが鼻をくすぐる。

真也はそれを口に含むと静かに目を閉じた。

レイの顔を思い浮かべる。

その顔はいったんぼやけてから、次第にゆりの顔へと変わっていった。

真也の意識はそこで途切れた。
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