彼の元・彼女の元へ
出会い
あれ?

私は海の藻屑になったのではないのか?
目が覚めた私はずぶ濡れのまま空を仰いでいた。

我ながら無茶な事をしたものだ。

しかしこうやって生きていることが不思議だ。

冬の海に無謀にも入り込み奇跡を信じて泳ぎ続けたけれど・・・

奇跡と言えばこうして命があることがまさに奇跡だろう。

ずぶ濡れの体が震える。

寒さに耐えがたく思考が再び失われそうになったその時…

頭上から人影とともに声が聞こえてきた・・・。

「早く服を脱いでそれにくるまって!」
言うが否や頭に毛布が降ってくる。
震える声では満足に返事も出来ず言われるがままにぎこちなく濡れた服を脱ぎ捨てる。
「あんた何考えてるの?」問いかけるその声は非難の怒号ではなく慈しみさえ感じられる優しさに溢れていた…
と思う…実際はお互いにずぶ濡れに冷えきった体を抱えてそれどころじゃなかったよね。
きっと…
「あんたが何考えてこの冷たい海どこまで泳ごうとしてたか知らないけど、この海の向こうはおおざっぱアメリカよ!」
「太平洋単独遠泳横断にチャレンジしてたんなら邪魔して悪かったけど白目向いて目の前で沈み始めたから助けたわよ。」
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