彼の元・彼女の元へ
「ああ…そうだったね!でもやっぱり想像していたとおり美しく素敵な方だ。」

「馬鹿なことばっかり言ってないでそれ着てこっちへおいでよ。」

彼女はそう言うと衣類を頭の上に放った。

「下着はないわよ!」

プィとそっぽを向いてそう言うとキャビンの奥へ引き返して行った。

「いや…有っても着ないだろ?普通…」

しかし冷えた体に乾いた衣類はありがたかった。
まっさらな生き返ったような気分になるとデッキから足を滑らせ再び海に吸い込まれない様にキャビンに向かった。

「服!ありがとう!ちょうどいいサイズだったよ。彼氏には悪いけどちょっと借りるよ!」

「彼氏のじゃないんですけど…」

なにやら声のトーンが下がる。

「え?ああ!旦那のか?若いのに結婚してたんだ?それはそれは色々と失礼いたしました。」

そう言うと恭しく頭を下げた。

「失礼ね!!独身よ!それは寝間着代わりにきてるやつだから大きめのサイズなの!」

またもや平手打ちが飛んでくるかと身構えるが代わりに靴下の塊が顔を直撃した。

「なんだ?決闘の申し込みかな?生憎美女との決闘は表では…極力しないようにしてんだけどな?」

「馬鹿な事ばっかり言ってないでそれも履いて保温しなさいよ!」

そう言う美しい唇にうっすらと笑みが浮かんでいた。

「しかしすごい船だね?ここで生活できるんじゃないの?」

決して大げさではなく素直に感じたままを言う。

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