彼の元・彼女の元へ
「あのね?それが命の恩人に対する態度なの?」

眉間にしわを寄せる風をつくって悪戯に緩く睨む彼女。

「当ててごらんよ?」

挑発的に投げ掛けるが、

「いいわよ、どうせろくなもんじゃないでしょ?」

と逆に挑発される。
海の真ん中でふたりっきりであることも忘れて夢中で会話に耽る。

「名前は?命かけて助けてあげたんたら…名前くらい教えなさいよね?」

「知りたいの?」

「別に知りたくはないけど常識でしょ?」

「嘘を教えるかもよ?」

「それは非常識でしょ!たぶん…その手のろくでなしじゃないと思う…」

魅力的な女に買いがぶられた男ほどだらしなく締まりのない者は…たぶんこの世に存分しないだろう。
私は駆け引きをやめて彼女の瞳を見た。

「マイケルでぇ~すぅ。」

堪らない沈黙に続けてきつい一言…

「…馬鹿じゃない?」

バッサリだ。

でもめげない。

「え?でも俺ってちょっと見ハーフっぽくない?」

「どこがハーフよ!ハーフってよりパープーに見えて来たわよ…がっかりって感じ?」

「あは…パープー…ね…」

「それってつかみのつもりだったらやめた方がいいよ…ってもう使う事もないだろうけど…」

「え?なんでなんで?」

「別に!古臭いって事!…っていうかちゃんと名乗りなさいよね?それとも…ふたりっきりしかいない海の真ん中でいつもの調子でナンパする本格的なお馬鹿さん?」

「いや…空気を和まそうかなと…」

「じゃあこのとおり充分和みましたからご心配なく!」

どこが和んでるってんだ…


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