彼の元・彼女の元へ
「あなたなんか来なければよかったのよ…」

ミューがため息の様に呟く…

「そうすれば私はここで穏やかにいられた…ずっとね…」


「ずっとってミュー?そんなわけにはいかないだろ?」


「そんなわけにいくの!そのつもりだったんだから…」


「だって仕事だってあるだろうし…第一水や食べ物だって、いくらこの船がデカイったって限度があるだろう?」


「そりゃそうよ…でも…それでいいのよ…」


「は?」

謎かけみたいなやり取りに思わず捨て鉢になりかける。


「この船に、たったひとつだけないものがあるって言ったよね…」


「ああ、確かにミューはそう言ってたよね!」

答えは結局そこに行き着くとは薄々考えてはいたが…

「もうわかったでしょ?」

ミューが薄く微笑みを浮かべる。

それほど考える時間は必要としなかった。


「燃料……か?」


私はきっと茫然とした顔でこの一言を絞り出しただであろう。


「そうよ…」

さざ波と風音が流れている。

ミューの言葉はかき消される事はなかった。











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