彼の元・彼女の元へ
「まさか~そんなバカな話しないよな、燃料がないなんてミュー?からかうなよ。」


精一杯の空元気で現実から引き離しジョークに変えようとあがくが…


「からかってなんかないよ…」


ミューのたった一言で打ち崩される。


「そんなバカな…」


絶句する私に宣告する様にミューが言う。


「ありったけの燃料でここまで来たのが三日前。そして今日あなたがやって来た。」

漂流の先に行き着いたのは漂泊する船だったのか?

これから私はどうなる?

一瞬にして漂泊者に逆戻りだ。

そしてほぼ確定的な未来が頭をよぎり酷い乾きを覚える。


「ありったけのって…帰りはどうすんだよ!」


勢い荒っぽい口調になってしまう私に同調しないミューが冷静に応える。


「帰りなんて初めからないのよ。」


その顔にはさっきまでの狼狽えは全く見られない。

かと言って確信に充ちたその視線に狂気の光も見あたらない。

しかし…

「狂ってる…」


私はそう口にせずにはいられなかった。


「狂ってなんかないわ。全て予定通りよ。」

そう冷たく良い放った後に続けて

「あなたが現れる事…そのたったひとつの事を除いてはね。」

そう言うと再び狼狽えた顔を見せる。


私は漂流者…

空っぽの頭のなかを海風と波の音がかき混ぜた。
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