彼の元・彼女の元へ
目覚め
すごくうなされていたわよ?そのまま地獄の底に堕ちて行ってしまいそうなくらいに…だから私とても心配になって…それにそのまま死んでしまいそうな深い眠りだったし…。おかげで私は助かったけど?」
そう言って微笑む彼女の姿を見て私も納得し、そして落胆の顔を作りそれに応えた。
毛布にくるまった彼女はまるで人魚の様にその肢体を横たえてる。
もう少し早く夢から覚めていたら…などと不埒な想いがよぎったとしても誰も私を咎められないだろう。
冷たい海に浸された衣類はまだ乾いていない。
だが陽が射し風も良い具合に吹いているので時期にまた身に付ける事が出来るだろう。
そんな事を考えつつ彼女の問いかけには微笑と落胆の表情のみで応え薄く目をあけて横たわる。
そしてもうひと時の楽しみだと決め込みそれと気づかれない様にこの美しい人魚姫を眺めていた。
と、波と風の音しか聞こえない船上に人魚姫の声が響く。
「気を失う前に最善の方法をとってくれて助かったけどぉ~…一言くらい断ってくれても良かったんじゃない?」冗談めかしてそう言う彼女の瞳に怒りの色はなく艶やかな潤いさえ見てとれた。
が、彼女の言葉にある種の含みを感じとった私は…
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