オレの宝物。それは君の笑顔【完】
翌日の休み時間。


オレは、向かい側の校舎――理科室に忍び込んで香奈と正人の様子をうかがった。


すると、あの無口な正人が香奈としゃべっていた。


笑顔まで、浮かべて。


女子と口をきくこともほとんどなく、しゃべったとしても笑顔なんて見せたことのない、正人が。


そして、香奈の方もけっこう楽しそうに話していて。


……なんだよ。


他の男に、笑顔、見せるなよ。


そんな可愛い顔でしゃべるから、正人にホレられちゃうんだよ。


香奈は、無防備すぎる――。


当然、嫉妬を覚えた。


だが、正人への「同情」も芽生えた。


風花のサッカーショップに一緒に行こうと誘ってくれた、正人――オレの親友に。


香奈は親近感を抱き、あんな無防備な笑顔を見せているのかもしれない。


香奈にあんな笑顔を向けられたら、好きになってしまうだろう。


たとえ、それが親友のカノジョだとわかっていても。

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