オレの宝物。それは君の笑顔【完】
帰りの電車が緑丘駅に着き、最初は家が同じ方向の数人で帰っていたが、最後は正人と2人になり気まずい空気に包まれた。


「あのさ――」


香奈を連想させないような話題を探していると、


「オレ、最近、北原とよく話すんだ」


正人が言った。


正人の方から香奈の話題に触れてくるなんて――。


オレは一気に緊張した。


「北原って、すごく幸せそうな顔してタカのこと話すんだよね」

「…………」

「北原は、タカのことしか見てないから」


正人は静かな目でオレを見つめた。


心配しなくても、大丈夫――。


その目は、オレにそう告げているようだった。

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