オレの宝物。それは君の笑顔【完】
「オレ、そろそろ帰るから」


腰を上げると、


「……うん」


香奈は少し寂しそうな顔をしながらも立ち上がった。


その香奈の腕を――。


オレはしっかりとつかんだ。


「――オレ、欲しいものがあるんだけど」


「…………」


香奈にも、オレの欲しいものがわかったのだろう。


少し恥ずかしそうに、目を逸らした。


「もらっても、いい?」


香奈の肩に手をおくと、緊張が走った。


「……目、つぶって」


オレの言うとおりに香奈が目を閉じて。




そっと、……キスした。


ほんの、一瞬。

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