オレの宝物。それは君の笑顔【完】
1週間後、オレは香奈の部屋にいた。


一緒にいた加納が親に呼ばれて家に帰り、香奈と2人。


「オレ、南高に行くよ」


考え抜いて出した結論を香奈に告げた。


「うん? 全国大会、出るんでしょ」


深刻に言ったのに、香奈はあっさりしていて、オレはちょっと落ち込んだ。


「……南高のサッカー部に入ると会う時間がなくなる、って聞いて」

「…………」

「寂しい思い、させるかも」

「…………」


香奈はしばらく考えていたが、


「大丈夫だよ。貴文がサッカーに夢中なように、私にはピアノがあるから」


まっすぐにオレを見つめて、言い切った。


「その代わり、絶対、全国大会に出てね」


香奈の、澄んだ瞳。


「……うん」

「……約束」


小指を絡めてくる香奈があまりにも可愛くて――。


そっと、キスをした。

< 118 / 233 >

この作品をシェア

pagetop