オレの宝物。それは君の笑顔【完】
その川田サンが来ている――。


オレは居ても立ってもいられなくなった。


しかし、今日は香奈の誕生日。


だが、川田サンには今度いつ会えるかわからない。


いや、香奈にだって今度いつ会えるかわからない――。


「悪い、ほんとに今日は行けない」


未練を断ち切るために、オレは素早く電話を切った。


「どうしたの?」

「なんでもないよ」

「もしかして、川田さんが来てるの?」

「…………」


香奈は、オレが川田サンを尊敬していることも知っている。


「……行ってもいいよ」

「え?」

「サッカーのこと、いろいろ教えてもらいたいんでしょ」

「……でも」

「早く行かないと、帰っちゃうかもしれないよ」


躊躇するオレの背中を、香奈はそっと押してくれた。


オレは逸る気持ちを抑えてファミレスへと急いだ。

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