オレの宝物。それは君の笑顔【完】
元ピアノ教室に灯りが点いていたのでドアを叩くと、


「……どうしたの?」


香奈は驚きながらも迎え入れてくれた。


「さっきはごめん」


「川田さん、帰っちゃったの?」


自分の誕生日に置いて行かれたことを責めることもせず、香奈はオレのことを心配してくれた。


「あれは裕太たちのウソだったんだ。だけどそんなことより、香奈の誕生日なのに、オレ――」

「私なら大丈夫だよ」


オレのことを思って言ってくれたのだろうが、平然としている香奈に、オレは傷ついてしまった。


「なんで……大丈夫なんて言うんだよ。

香奈は、寂しくないのかよ?

オレに会えなくても平気なのか?」


「…………」


「オレが好きなことしてるせいで会えないんだから、オレにはこんなこと言う資格、ないかもしれないけど。

オレは、……寂しいよ」


「…………」

「もっとオレを困らせろよ。もっと、オレに、ワガママ言ってくれよ」



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