オレの宝物。それは君の笑顔【完】
放課後。


「織田、ちょっと来い」


練習にやって来たオレを待っていたのは、工藤センパイの険しい顔。


工藤センパイは、3年生の中でも特にサッカーに対する姿勢が真面目で厳しい。


トミは工藤センパイに退部させられたといっても過言ではなかった。


「おまえ、なんで昨日来なかったんだよ」


3年生がほとんどそろっている前で、工藤センパイはオレを詰問した。


ふと、見ると、主将が不敵な笑みを浮かべていた。


――ハメられた。


オレはすぐにこの状況を理解した。


主将は、嘘をついてオレを試合に来させないようにして。


他のセンパイたちに「織田は足の痛みで休むらしい」とでも言ったのだろう。


一日練習がなければ、オレが香奈に会う可能性は高い。


それがセンパイたち――特に、工藤センパイの耳に入れば、あとはもうトミの時のように――。

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