オレの宝物。それは君の笑顔【完】
「……どうして?」
「…………」
オレは黙っていた。
「ねえ、どうして?」
「…………」
なにも答えることができなかった。
「理由、言って」
香奈の涙声――。
「私のこと、ちゃんと見て」
しかし、香奈を見ることはできなかった。
目を合わせてしまったら――涙を見てしまったら。
決心が揺らいで香奈を抱きしめてしまいそうで――別れの言葉もなかったことにしてしまいそうで。
「ごめん」
オレは逃げるように部屋を出た。
「…………」
オレは黙っていた。
「ねえ、どうして?」
「…………」
なにも答えることができなかった。
「理由、言って」
香奈の涙声――。
「私のこと、ちゃんと見て」
しかし、香奈を見ることはできなかった。
目を合わせてしまったら――涙を見てしまったら。
決心が揺らいで香奈を抱きしめてしまいそうで――別れの言葉もなかったことにしてしまいそうで。
「ごめん」
オレは逃げるように部屋を出た。