オレの宝物。それは君の笑顔【完】
<加納響子>


夜、ベッドに寝転んで少女マンガを読んでいるとノックに続いて、


「響ちゃん、入っていい?」


弱々しい香奈の声。


この時間は、ピアノ室でおだっちと会っているはずなのに。


私はちょっとイヤな予感がした。


「いいよ」


私の返事を待って入って来た香奈の目は、泣き腫らした後。


「どうしたの?」


私はベッドから飛び起きた。


「貴文が……別れてほしいって」

「え、嘘ッ、なんでっ?!」

「わからない。理由、言ってくれないの」


香奈は消え入りそうにつぶやくと、泣き出してしまった。


おだっち――ううん、もう、そんなのん気な呼び方はしていられない。


織田! 大バカヤロー!


いったい、どういうつもりよ。


香奈を泣かせるなんて。

< 156 / 233 >

この作品をシェア

pagetop