オレの宝物。それは君の笑顔【完】
「響ちゃん、これ、あげる」


数日後、私の部屋に入ってきた香奈の手には、両手いっぱいのお菓子が。


「どうしたの、こんなに」

「貴文が私に別れようって言った理由、教えて」

「え?」

「響ちゃんは、甘いお菓子と引き換えに、知りたいことなんでも教えてくれるんでしょ。私にも教えて」


今にも泣きそうな瞳で見つめられて、私は素早く考えた。


本当の理由を知ったら、きっと、香奈は待ち続ける。


香奈よりサッカーを選んだ、バカ男を。


会えなくて寂しくても、我慢して。


それよりも、新しい恋――。


新しい恋をして、早く明るい笑顔を見せてほしい。


だから、私は嘘をつくことにした。


「ほかに好きな子ができたみたいよ」

「……うそ」

「私が香奈に嘘ついたこと、ある?」

「……でも、そんなの信じない。響ちゃんの嘘つきっ」


香奈は怒って出て行ってしまった。


あ~あ、もう、しょうがないわね……。


私は重い腰を上げた。

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