オレの宝物。それは君の笑顔【完】
「聞いたわよ」


織田の家の前で、帰って来たところをつかまえた。


「だろうな」


「織田が別れようって言った理由、香奈に聞かれて、織田に他に好きな人ができたからだって答えといた。

そうとでも言わなきゃ、織田のこと、あきらめられないだろうから」


「…………」


「でも、香奈、信じないんだよ。

織田のことあきらめられなくて、ずっと泣いてるんだよ。

香奈を泣かせたままで、平気なの?」


「……香奈なら、大丈夫だよ」

「なんでそんなこと言えるのよ。どういう状況か見てもないくせに」

「だって、香奈にはピアノがあるじゃん」

「その大好きなピアノも、ぜんぜん手につかないの。やめちゃうかもしれない」


これは、ウソ。


ほんとは、別れようと言われた翌日から、ピアノ室にこもって憑かれたようにピアノを弾いてた。

< 159 / 233 >

この作品をシェア

pagetop