オレの宝物。それは君の笑顔【完】
<貴文>


加納と打ち合わせて香奈に会いに来た。


夕暮れの、ピアノ室。


その日は、奇しくもオレの誕生日の前日だった。


深呼吸をして、ドアをノックした。


中には香奈がいるはずだった。


加納と一緒に。


「――貴文」


ドアを開けてオレを目にした瞬間、香奈は目を輝かせた。


これからオレがなにを言うかも知らずに。


「別れたい理由、ちゃんと言ってなかったから」


香奈は一瞬にして、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。


そんなに悲しそうな顔するなよ。


何も言えなくなるじゃないか。

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