オレの宝物。それは君の笑顔【完】
だけど。


「もう、オレのことは、忘れて」


「……イヤ」


首を横に振る、香奈の瞳から。


大粒の涙がこぼれた。


「イヤだ。忘れない。……忘れられるはず……ない」


次から次へと、あふれる涙。


こんなに泣きじゃくる香奈を見たのは初めて。


そんなに泣くなよ。


オレは耐えられず、香奈のほおに手を伸ばしてしまった。


涙を拭う指先から、香奈の温もりが伝わってくる。


「もう、オレのために泣くな」


香奈に触れるのも、これが最後。

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