オレの宝物。それは君の笑顔【完】
<貴文>


9月23日――香奈の誕生日。


市内大会の決勝で北高に負け、罰として河原をランニング中、偶然、広大なコスモス畑をみつけた。


その瞬間、頭を過ぎったのは――エイプリルフールの約束。


もう、果たすことのできない――果たす必要のない香奈との約束――。




解散後、オレはひとりでコスモス畑にやって来た。


風に揺れる、コスモス。


土手に座ってぼんやり眺めていると。


浮かんでくるのは、香奈の笑顔。


香奈との思い出――。


香奈の一番好きな花は、コスモス。


3年前の今日、知ったこと。


こんなにたくさんのコスモスを見たら、香奈は最高の笑顔を浮かべるだろう。


しかし。


その笑顔を見ることは、もうできない。

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