オレの宝物。それは君の笑顔【完】
今年のバレンタインデーは、この辺りにしては珍しく、昼過ぎから雪が降り出した。


「みなさ~ん、ちょっといいですか~」


6時間目の授業が終わると、加納が大声を上げて注目を集めた。


「今日はバレンタインデーです。

というわけで、女子から男子にチョコのプレゼントをしたいと思いま~す。

じゃあ、女子のみなさん、まずは隣りの席の男子に渡してください」


加納の段取りは、妥当なのかもしれない。


だけど、オレの隣りは、香奈ちゃん。


マラソン大会以来、オレは香奈ちゃんの顔もまともに見れないほど落ち込んでいた。


だから。


「……はい、柴崎くん」


香奈ちゃんから差し出された瞬間、


「いらないよ」


オレはチョコを払いのけていた。


最低――。


みんなの目がオレを非難しているような気がして、


「義理チョコなんて、いらないんだよ」


オレは教室を飛び出した。

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