オレの宝物。それは君の笑顔【完】
「どうしてあの時言ってくれなかったの?

言ってくれたら、私、待ったのに。

ずっと、待ってたのに。

……私、すごく……辛かったんだよ」


今にも泣き出しそうな香奈を、オレはぎゅっと抱きしめた。


香奈の以前より短くなった髪は、以前と変わらず春の香りがした。


「ずっと、こうしたかった」

「…………」


オレの腕に包まれて息をひそめている香奈は、しかし、もう柴崎のカノジョ。


もう、他の男のカノジョ――。


「な~んて、ウソ」


オレは香奈から離れて、


「今日は、エイプリルフール……だよ」


冗談ぽく笑い飛ばそうとしたが、うまく笑えなかった。


オレを見つめる香奈の潤んだ瞳が。


愛おしくて。


切なくて。

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