オレの宝物。それは君の笑顔【完】
その夜、加納の言葉を信じてさっそく駅にやって来た。


正直、高野の話を聞いて落ち込み気味だったので、「いいこと」が起きることを期待していた。


下り電車が到着し、改札口に現れたのは。


――北原。


学校では校則でふたつに結んでいる髪を、今は下ろしていた。


サラサラの、長い髪。


それが見られただけでも「いいこと」だったけど、


「あ、織田くん」


オレに気づいて、北原が近寄ってきた。


「ど、どっか行ってたの?」

「うん。ピアノ習いに行ってたの」

「へえ……あ、送るよ」

「……うん」


恥ずかしそうにうつむく北原の横に並び、オレたちは歩き出した。

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