オレの宝物。それは君の笑顔【完】
会場に着くと、加納が花火の写真を撮り始めた。


さすが写真屋の娘だけあって、カメラを構えるポーズが極まっていた。


花火ばっかり撮ってないで、北原のゆかた姿も撮ってくれよ――。


空にカメラを向ける加納に念を送ってみるが、一向に通じないようだ。


せめて自分の脳裏に焼き付けようと、隣りにいる北原を何度も盗み見た。




「わたあめおごってくれたら、帰り、2人にしてあげるよ」


不意に、加納が耳元でささやいた。


「――――! 

ちょっと、マジで、そうやって突然現れるの、やめてくれよ」

「気づかれずに背後をとる――常にこれ、精進なり」


……また訳のわからないことを言い始めたよ、この人は。


「それで、わたあめ、おごるの、おごらないの、どっち?」

「でも、2人で帰って大丈夫か? お父さん、厳しいんだろ?」


本当は、オレは北原と2人で来たかったのだが、お父さんが厳しいからと言うので、加納たちも一緒に来ることになったのだ。


「大丈夫よ~。おじさんは、今日も仕事で遅いし。だいたい、香奈が真面目すぎるのよ」

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