オレの宝物。それは君の笑顔【完】
わたあめを手にしてほくほく顔の加納と、その加納に引きずられるようにして健介が去って――。




北原と2人きりの帰り道。


「あのさ……来年も」


オレたちの周りは、帰ろうとする人でいっぱい。


「また一緒に」


2人の間を何人もの人が通り過ぎ、その度に会話が途切れた。


だから。


もう会話が途切れないように。


もう誰も2人の間を通れないように。


オレは、北原の手を握った。


北原はその一瞬、身を硬くしたが、オレの手を拒否しなかった。


そして、会話は、もう、途切れなかった。


オレたちは、それからずっと、無言だったから。


胸がいっぱいでしゃべれなかったからだ。

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