オレの宝物。それは君の笑顔【完】
夏休みも半分以上が過ぎた頃、北原と水族館に向かっていた。


緑丘駅で待ち合わせて、電車に乗った。


水族館のある駅までは、およそ20分。


空席もあったが、隣り合わせに座るのがなんとなく恥ずかしくて、オレたちは入り口付近に立っていた。


ふと、腕がくすぐったくなった。


斜め上の扇風機の風で、北原の髪がオレの方へなびいていたのだ。


「あ、ごめんね」


北原は気づいて、長い髪を手で束ねた。


「来週、髪切ろうと思ってるの」

「え?!」


オレは思わず声を上げてしまった。


「乾かすの、大変なんだもん」


それはそうかもしれないけど。


でも。


「オレは……そのままでいてほしい」


オレの顔はきっと、真っ赤になっていただろう。


「……じゃあ、切るの、やめる」


北原はオレを見上げて、恥ずかしそうに微笑んだ。

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