オレの宝物。それは君の笑顔【完】
部活を終えて北原との待ち合わせに向かう途中も、柚夏子のことが頭から離れなかった。


だから会った瞬間、オレは北原の目を見ることができなかった。


「どうしたの?」


北原に顔を覗き込まれて、


「あ、いや……北原から、チョコもらえるかな~、と思って緊張してた」


オレは笑ってごまかした。


そんなオレを疑うこともせず、北原はバッグの中から箱を取り出し、


「はい――織田くん、甘いの苦手でしょ。だから、甘さ控えめにしといたよ」


恥ずかしそうに微笑んだ。




まるで。


穏やかな、春の陽だまりのように……。

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