オレの宝物。それは君の笑顔【完】
初めて見る、北原の、涙――。


頭から氷水をかけられたように動けなくなってしまった。


「……織田くんなんて……大キライ……」


いっそ大声で怒鳴ってくれたら、まだ救われたのに。


北原はため息を吐くように微かな声をもらした。


そして、どんどん小さくなっていく北原の後姿を、オレは追いかけることもできずに見ていた。


柚夏子の涙と、北原の涙――。


どちらもショックだったが。


もう、泣かせたくないのは――。


オレは、柚夏子の家へ向かった。

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